J.K.ユイスマンス (J.K.Huysmans)

1848年 パリ(仏) ― 1907年 パリ(仏) 

  【略歴】
 1848年2月5日、パリにて木版画家の父と小学校教師の母の間に生まれる。
 1856年、8歳のとき父親が他界。翌57年、母親が製本工房の経営者と結婚。
 1866年、バカロレアに合格。内務省に入ると共にパリ大学法学部に登録。
 1867年、女優と一時同棲。義父が他界。月刊誌に美術批評を寄稿するようになる。
 1870年、晋仏戦争で従軍するが、翌71年、パリ陥落に伴い、ヴェルサイユの内務省の仕事にもどる。
 1874年、『薬味箱』を自費出版。テオドール・バンヴィルに高く評価される。
 1876年、5月に母が亡くなり、義父から受け継いだ製本工房を経営することになる。
      『マルト』を完成させるが、検閲を恐れてブリュッセルで印刷すべく当地に滞在。カミーユ・ルモニエらと交流。ルモニエを通じてフェリシアン・ロップスを知る。その年より、情報警察局に勤務。
 1877年、『マルト』が高く評価され、エミール・ゾラやモーパッサンらと交遊。
 1879年、『ヴィタール娼婦』をパリで刊行。これを絶賛したゾラの紹介で、「ヴォルテール」紙に美術批評を連載。
 翌80年に短編集『メダンの夕べ』『パリ・スケッチ』を刊行。81年に『世帯』、82年に『流れのままに』を刊行。


 1983年、『近代芸術』を刊行。マラルメと交友関係を結ぶ。
 1984年、『さかしま』を刊行し、スキャンダルとなる。ゾラと決別。
 1885年、ブロワ、ヴィリエ・ド・リラダンらと交友関係を結ぶ。
 1887年、つかず離れずの愛人、アンナ・ムニエが重病にかかる。この頃より超自然的なものに惹かれる。
 1888年、カッセル美術館を訪れ、グリューネヴァルトの『磔刑図』に衝撃を覚える。
 1889年、ヴィリエ・ド・リラダンが亡くなり、マラルメと共に彼の遺言執行人となる。この頃より近代の悪魔主義に関する著作――後に『彼方』として実を結ぶ――を構想し、パリのオカルティストたちと接触する。神秘学サークルを通じてジュール・ボワや詩人のエドゥアール・デュビュと親交関係を結ぶ。 ブーラン(別名ジョアネ博士)の噂を耳にして、彼を知る反教権主義者ロカに連絡。ブーランと敵対するガイタ侯爵及びその弟子オスワルト・ヴィルトを紹介される。
 1890年、ブーランに悪魔主義に関する資料の提供を依頼。ヴィルトはユイスマンスがブーランに関与せぬよう警告したが、ブーランガイタこそが悪魔主義者だと主張。9月、ブーランの暮らすリヨンを訪問し、親交を結ぶ。
 1891年、『彼方』を刊行し、大反響を呼ぶ。なお、ユイスマンスは『彼方』の中でペラダンについて「安直な魔法使い」と皮肉る。こうしてペラダン及びガイタブーランの「呪術戦争」に巻き込まれる。7月に再度ブーランのもとを訪ねる。
 1892年、精神的苦悩を抱え、7月にイニーのトラピスト修道院に赴き告解をするが、その直後にブーランに会いに行く。
 1893年、1月4日にブーランが急死。若い友人のボワが新聞記事でガイタらを告発したことから、ガイタとボワの決闘沙汰に巻き込まれる。4月、アンナ・ムニエが精神に障害をきたし、サンタンヌ精神病院に入院。 役所仕事でレジオンドヌール勲章騎士章受勲。
 1895年、アンナ・ムニエが死亡。ブーランの元家政婦がユイスマンスの家政婦となる。
 1898年、『大伽藍』を刊行。2月に役所を退職する。
 1901年、6月に『スヒーダムの聖女リドヴィナ』を刊行。
 1905年頃から頸部の腫れ物に悩まされる。後に癌と分かり、苦痛に悩まされるが、神から与えられたものだと信じて痛み止めのモルヒネを断り、亡くなるまで耐え抜いた。
 1907年、文学者としてレジオンドヌール勲章4等を受勲。
      4月に終油の秘蹟を受ける。5月12日逝去。モンパルナス墓地に葬られる。

 【参考文献】
 『ユイスマンス伝』 ロバート・バルディック(著) 岡谷公二(訳)  学習研究社 (1996/11)

 【ユイスマンスの著作】

  『三つの教会と三人のプリミティフ派画家』 田辺保(訳)  国書刊行会 (2005/09)

  『ルルドの群集』  田辺 保 (著)  国書刊行会 (1994/02)

  『さかしま』 渋澤龍彦(訳) 光風社出版 (1984/01)

  『彼方』  田辺貞之助 (訳)  東京創元社; 第12版版 (2000)

  『大伽藍―神秘と崇厳の聖堂讃歌』 出口裕弘 (訳)  平凡社; 〔改訂版〕版 (1995/07)

  『腐爛の華―スヒーダムの聖女リドヴィナ』 田辺貞之助 (著)  国書刊行会 (1994/02)



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